【梶原真智 連載コラム ワンハンドキッチン】切り干し大根のタパス

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何かと忙しい日常の過ぎていく時間の中にいると、一人ぼんやりと過ごしていた頃が懐かしいような妙な気分になることがあります。遠くなったからこそ今なら冷静にあの頃を見極められるようなそんな気もして。過去に帰ることも変えることも今更できないというのに、不意にやってくるそんな仕方のない思いが過るのはその時口にした食材がきっかけであることも少なくないようで。

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懐かしいご飯と聞かれたらどんな答えが普通、なのでしょうか。主食が何であれ合わせるおかずにあたる品々をどの国で尋ねても、何故が共通して茶色いメニューが並ぶのはとても面白く感じます。特別ではない日常にあるのは昔ながらの地味な料理の数々。その人のおいしいを司るのは原体験のそんな味。ふわりと香る匂いも舌に沁みる加減も独特の家庭の味。あなたが帰りたくなるのはどんな味、でしょうか。

遠い国での生活は長く忙しくなるほどに、ふとした瞬間の思いを鮮やかにします。それほど好きではなかったはずの出汁や味噌や海苔や梅干しが徐々に恋しくもなる。そんなある日、食材店で切り干し大根を見かけました。たぶん前から陳列されていたのだと思いますが、目には入っていなかった。もしかするとその時は慌ただしい生活に疲れ始めた気持ちが求めていたのかもしれません。見た目も地味な保存食。だけどあの独特な食感、久しぶりに食べてみたい。でもどうやって作るんだっけ?買いたいけれどやり方は?ここには十分に調味料もないのに。そう思って見渡した食料品の棚にツナ缶。あ、出汁の味はこれで代用できるかも!だけど片手でどうやって開けたらいいんだろう。使いたいのは中身だけ。開けたらなんにでもできるのに。それでも一つ手に取って、もどかしい気持ちでくるくるひっくり返していたらとうとう取り落としてしまいました。慌てて拾い上げてみると缶の端が凹んでいる。やっちゃった。買うしかないか高いけど。苦笑いしながらレジに並んでいる時に、ふと思いました。あ、もしかしたらできるかも。

苦肉の策というよりは、あ、というひらめきと気づきが味方しました。今でも時々作ります。和食というより中庸な、パンにもおいしい一品です。楽しい食感に味見が進んでしまうかも。野菜嫌いな方にもぜひ。

【材料】
ツナ缶 1つ、切り干し大根 1袋
マヨネーズ、にんにく(チューブ)、胡椒、砂糖、牛乳、ごま油 各適量
※4人分のイメージです

【手順】
①ツナ缶を開ける
タブを90度まで持ち上げる。
金属の切れ目に沿い、蓋部分を垂直に押し込む。
途中で缶の油をきる。
※缶の大きさにより受けとなるコップは変えるが、缶ごと落ちそうなときはタブをコップの縁にかけると安定する
※テイクアウト用のプラカップでも可能

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蓋を落としきったらゆっくりと持ち上げて外す。

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②切り干し大根を戻す。
全体がつかる量の熱湯を入れ、3-4分そのままにする。
キッチンはさみで適度に切れ目を入れる。
水を捨て軽く絞る。

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③味をつける
調味料とツナ、切り干し大根を混ぜる。
味見をしながら欲しい味の調味料を追加する。

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④盛り付ける
※おかずにも。自宅でのちょいのみにも。野菜中心とはいえ、食べ過ぎにはご用心ください。

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平行線がつまづいて組み重なると価値になる。
昔の知恵と今の知恵。
なんだそうかの偶然で楽しめる味は無限大。
ほわかり食感おもしろい切り干し大根タパス、出来ました。

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