【梶原真智 連載コラム ワンハンドキッチン】因子分解の冷ややっこ

ワンハンドキッチン

因子分解の冷ややっこ

「前に進むために、確かめる」
自分の周りの事象は、そこにあることが当たり前になっていて失われるまでその大切さに気がつかないものです。

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料理をしたいと思いながら、もうできないだろうなと諦めつけていたのは実は自分自身でした。
ナイフも満足に握れない。指の力なんてどんなにやっても戻ってはこない。やらなくちゃいけないのは頭で理解しているけれど、気持ちが全く伴わないリハビリの時間。用意されているのは地味な使い古しの訓練器具。それだけでもう、うんざり。指示されるのはただ繰り返すだけの動きしかなくて。こんなことが何になる?何度となく繰り返す質問への答えは曖昧で。私がしたいのは従って黙って耐えるこれじゃない。欲しいのは「よくできました」な声掛けなんかじゃない。リハビリの時間に終わりはあるけれど、ハンデは一生続くのに。頑張る意味が分からない。続ける意味が分からない。いったいいつがゴールなの。うずまく日々の心の声に潰されそうになりながら過ぎていく毎日はほんと、本当に長かった。
これは今でもありありと思い出せる苦い苦い思い出です。当時のもやもやした思いが、今の活動につながる原動力なんだと、改めて思います。

わかっているつもりの様々を確かめる作業は、時に大きな発見にもなります。知ることから始めれば、知ろうとすることから始めれば、料理への挑戦のハードルも、今のイメージより低くなるのかもしれません。

ハンデがない方の真似事をあえてする必要は全くありません。自分にできることを自分のやり方でやる、ただこれだけ。一体どんな仕組みで成り立っているのかを整理して眺めると、実に単純な構成であることに気がつきます。その過程の様々を、今できることに置き換える。そして、行動の語尾に「だけ」をつけてみる。あける「だけ」。だす「だけ」。もる「だけ」。そんなに難しいことでもない。

料理と聞いた瞬間に「さあ、どうしようかな?」の顔になる方が、増えてくれたら嬉しいです。
たとえばこの時期に美味しい冷ややっこ。「食材を取り出す」過程を是非考えてもらえたら、と思います。

【材料】
パック入り豆腐、 鰹節(小分けパック)、小葱(小分けパック)

片手で食材を取り出すだけですが、皆さんならどうしますか?
様々な製品は両手動作を基準に設計されています。欲しいのは大きな切れ目ではなく、動かないように押さえる手。だけど片手だとそれはとても難しい。だから「外付けの片手」を他の道具で作ります。

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【写真・道具】
コップ、カードスタンド、はさみ
パックカッター(パックと袋のカッター ピンク CH-2002/曙産業)
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【写真・使い方】

①鰹節(小分けパック)を開ける
※支えの片手は道具の使い方次第
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②小葱の袋を開ける
※小さい袋は意外にもかわいい小物が役に立つ
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③豆腐を取り出す
※ちいさいメクリはつかめない、だからおおきいメクリを作る
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④皿に盛る
※ケースの側面を握り潰すように押し、豆腐とケースの間に空気を入れる
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言葉からはじまる行動もある。
言葉からはじめる行動もある。
自分の中の片付けが済んだら、動いてみるのも悪くない。
美味しいは知ることからはじめていける。
思い込み外した簡単冷ややっこ、出来ました。

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