【梶原真智 連載コラム ワンハンドキッチン】おすすめしたい青椒肉絲

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おすすめしたい青椒肉絲

だれかのカタチにとらわれない。
食べるのは好きだけど、作るのは・・・ハンデに限らずそういう方は少なくありません。そんな時、頭に思い描いているのはテレビや雑誌でみたそのメニューの完成形だったりします。美味しそうに光をうけてきらきらとみえる、あの姿。それは確かに誰にも起きる現象で、名前と味と佇まいが記憶とリンクする。あれと同じものは作れない。だから、作るのは難しいはず、どうやらそんな発想になるようで。

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料理を始める前、実は自分自身もそうでした。あれ食べたいな、と思い出すのは両手動作で完成させた自分なりの完成形。その時の状況までありありと思い出されて笑顔になりかける直前に、目に入る動かない手。複雑な気持ちに包まれてやっぱりやめた、と下を向く。ハンデを持つ当事者同士で話をしていると、あるある話にこの件も出ます。そしてセットで語られる「調理訓練で作った料理」への苦い記憶。最初にかけられる「いつも通りでいいですよ」の一言に、無意識に行ってきた作業を再現しようとして空回りしてしまったというエピソードの多いこと。リラックスして臨んでほしい気持ちからのセリフだったとしても、その言葉の持つ暴力性に驚くほど気がついていない。医療者にとっての当たり前の感覚に、改めて違和感を覚えます。進んでいく調理行程の中で気持ちもどんどん暗くなったよねと、今でこそ笑い合いながら話せるけれど当時を思うとほんとうに、切なくなってしまいます。

実は片方の手で最初につくる料理として、おすすめなのは中華料理です。誰でも食べたことはあるけれど、バリエーションが多いことが最大の利点。加熱前提のメニューであれば、どんな国や時代に合わせても作りやすい。少ない食材であっても調味料の組み合わせでどんなふうにでも変えることができるし、完成形の見た目もいい。そして何より、失敗しにくい。おいしい、うれしいを手軽につくれることはささやかな幸せにつながります。

今回は野菜コーナーにいつもある目に鮮やかなピーマンを使います。料理をする上で、野菜を制することは重要なポイントです。だけどその形は実はどれも不安定。まな板の上でごろごろ落ち着いてくれません。さらにはちいさな種があったりする。扱いにくいと眉をひそめる前に、そんな時は作りたい「何か」を頭の中で再現してみましょう。どこかで見た完成形の見事な映像ではなくて、どんなふうにこれを食べたいのか。食べているのその材料のカタチはどんな姿なのか。たぶんそこに出てくるのは、今目の前にあるごろんとした生のままではないはずで。あ、なんだ。できるんじゃない?肩にはいるチカラをほんの少し、軽くできるかもしれません。

【材料】ピーマン1袋(3-4個)、肉(豚、牛お好みで200g)、片栗粉少々
調味料:醤油、酒、オイスターソース、砂糖(割合は1:1:1:1/2)、鶏がらスープの素少々

【使う道具】
キッチンはさみ、耐熱容器、シリコンカバー(ラップ)、菜箸、ビニール袋、電子レンジ

【手順】
①肉をキッチンはさみで細切りにする
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②肉をビニール袋に入れ、片栗粉をまぶす
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③ピーマンをひらき、細切りにする
※ポイントは中央より少し下を手のひらで押すこと
※必ず下方が破れるのでそこから指で押し開き、ヘタと種を取り外す
※ピーマンの中身は、空洞とヘタと中隔についた種だからその構造を利用する
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④耐熱容器に材料、調味料を全て混ぜ合わせる
※今回は大さじ1ずつ醤油、酒、オイスターソースを混ぜ、大さじ1/2砂糖
※今回の鶏がらスープの素は小さじ1
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⑤シリコンカバー(ラップ)をかけて電子レンジで3分間加熱する
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⑥電子レンジから取り出して全体をかき混ぜ、再び電子レンジで2分間加熱する
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※おまけ 余ったら市販の春巻きの皮で巻いて焼き付けてもおいしいおかずに
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頭に浮かぶ映像は誰かが作ったカタチであって
おいしいの正解とは限らない。
時短簡単節約その価値は時代で変わるもの
すぐおいしいはすぐ笑顔
今の時代におすすめの青椒肉絲、出来ました。

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