オンラインイベント「あの記事の人に会いたい」レポート②

2021年4月~5月、3回にわたってオンラインイベント「あの記事の人に会いたい」を開催しました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

コトノネに登場した方(連載も含む)をゲストに、読者の方からオンラインでインタビューをしていただくという、この企画。このコラムでは、イベントの様子と参加された方からの感想を、抜粋してご紹介します。

第2回(4/24)

ゲスト:岩崎航さん(詩人)

筋ジストロフィーという病とともに生きる、詩人の岩崎航さん。2011年の東日本大震災では、宮城県仙台市の自宅で被災しました。それから10年、どんな思いで詩をつづってきたのか。「存在」というキーワードを軸に、お話をうかがいました。読者インタビュアーは鈴木洋介さんです。

「震災のときは、呼吸器の電源が確保できない、一時的に介助の手が途切れるなど、自分ではどうしようもないところで、生きていく基盤が立ち行かなくなってしまった。自分がいることで、周りの人がどんどん疲弊していくのを、見ていることしかできない。自分の存在の根っこの部分が、奪い取られていく気がしました」と岩崎さん。

「岩崎さんにとって、詩を書くことの意味とは?」。鈴木さんの質問には、「本当に自分の中から出てきた言葉は、自分を励ましてくれることがあります。一見前向きじゃない言葉であっても、つらい気持ちを偽りない言葉で表すこと自体が、自分自身を救っていく。奥底から湧いてくる言葉は、生き抜く力みたいなものを揺り動かしてくれるものです」(岩崎さん)。

コトノネ37号で岩崎さんを紹介した記事の中で、とくに鈴木さんの印象に残った言葉がありました。それは、「病を乗り越える」のではなく「何か苦しいことがあっても、一つひとつなんとかしのいでやっていく。それを続けていくのが、生きていくっていうことなのかな」という一節。岩崎さんは、「苦しいことが重なったとき、自分の存在を消し去ってしまいたい、という思いが湧いてくることもあります。そういうとき、がっちり手を握ってくれる人の存在に救われてきました。人との関わりに悩み苦しむこともありますが、押しとどめてくれるのもまた、人との関わりなんです」と話してくれました。

【参加された方からの感想】

私も 悲しみに 心が震えると 言葉にしてきました。
書くことは 思いを
純化させようというか
昇華させようというのか
哀しみを抱えながらも それを とらえ直すというのか…

「自分のなかの声を 出していくこと」
「心の奥底にある エネルギーを呼び覚ます」
今日 岩崎さんが 仰っていたこと
ああ そうか
そうだったんだ
自分は 自分の心の声に気づいてあげることで
それを言葉に紡いでいくことで
自分のなかの 力に気付いていくことが できたんだなと
思いました。

書くって いいですね。
詩って いいですね。
(Uさん)

岩崎さんのお話を聞けて良かったです。
私自身、2度の闘病生活を経験。今でも自分の気持ちに折り合いをつけています。

初めて数年の闘病生活を経験した時は、どうにか抜け出したい、何かを始めたい気持ちが強くなり、武蔵野大学通信教育部で学ぼうと思いました。そのなかで、出会った人との関わりから救われたり、時に厳しい助言を頂いたことで病気だからと逃げていた自分に気がつくことができました。

まさに、岩崎さんがおっしゃっていた、『追い詰められたり、苦しい時こそ心から沸いてくる。』というのが、その時の自分と重なりました。それまでは、心に響くようなことも、心が震えるような事もなく普通に生きていました。病気を経験したからこそ追いつめられて、沢山いろんな事を考えて、感じかたも変わっていきました。

私は、その時の気持ちを原動力にして生きています。
(Mさん)


【読者インタビュアー・鈴木洋介さんコメント】

詩人の岩崎航さんとの対談が実現しました。作業療法士として様々な状況にあるクライエントと関わっている時もそうですし、自分自身もかつて、「消えてしまいたい…」と思う経験があったから、お話を伺いたいと思っていました。どうすることもできない、この感情を5行の中に現すために、言葉を吟味し、湧き上がってくる言葉を日々綴っている岩崎さん。消えてしまいたい思いの中で、「自分にもできることはある」という気づきから、自分はここにこうして生きているんだ、という声をあげていく。それは、苦難を乗り越えるという強さというよりも、「なにか苦しいことがあっても、一つ一つなんとかしのいでやっていく、それを続けていくのが生きていくということなのかもしれない…自分で自分を励ますようにして書いています…」という言葉が、私の心に響きました。オンラインではありましたが、お会いできて良かったです!

第1回レポート(ゲスト:多田伸志さん)

第3回レポート(ゲスト:野々村光子さん)