「商店街」ではたらくことは、リハビリテーションだ。――「多機能型就労支援施設KAeRU」(前編)

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北海道・十勝地方の「電信通り商店街」は、「福祉の商店街」をテーマにし、活気を集めている。12の福祉事業所が電信通り商店街に軒を連ねる。その一つが、「多機能型就労支援施設KAeRU(カエル)」だ。「KAeRU」では、精神障害や高次脳機能障害のある人たちが、革工芸に取り組んでいる。商店街の中で障害者が働くことには、どんな意味があるのだろうか。

商店街に、見守られながら働く

「電信通り商店街」で障害者就労支援事業所を運営する「多機能型就労支援施設KAeRU」。利用者の一人、小椋雅人さんは、六年前の脳梗塞による脳幹内出血で、身体や言語に後遺症が残っているという。「25年間、地元のスーパーに勤めていましたが、辞めざるをえませんでした」。なんとか仕事に就きたいといろいろ動く中で、「てのひら」の革細工ワークショップに参加し、そのまま入所することになった。「革細工は、座ったままでできるので、自分にもできるんじゃないかと思ったのですが、実際は思った以上に細かい作業で、苦労しています。でも面白い」。この「電信通り商店街」には、ほかの作業所もあって障害者が多く、周囲の人もみんな気さくに話しかけてくれるから、居心地がとてもいいのだという。

施設長の清野真知さんは、商店街で働くことが、障害者にとってもいい影響をもたらしていると話してくれた。「商店街の中にある作業所ということで、働いている障害者たちにも<商店街に見守られている>感覚があるようです。安心感というか」。たとえば、「KAeRU」で働く人たちは、毎日作業所の周りを清掃しているが、最初のうちは、みんな人目を気にしながらコソコソと掃除をするのだそうだ。「それが、商店街の人たちから声をかけられることで、働く意味を感じたり、『ここにいてもいい』と思えるようになるんです」と清野さん。ある60代の男性利用者は、そうやって毎日の清掃を続けるうちに、不自由だったはずの体が、どんどん動くようになったという。「特別なリハビリテーションのプログラムを組んでいないのに、体の機能がどんどん向上していく。これは驚きでしたし、この商店街でやらせていただいて、本当によかったと喜んでいます」。

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※「電信通り商店街」の記事は、2017年5月発売の『コトノネ』22号に掲載されています。

写真:山本尚明