「福祉の商店街」にある、高齢者も障害者も、みんなが楽しむ居酒屋――「惣菜ごはん屋でんしん」(後編)

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「福祉の商店街」をテーマに、障害者施設を呼び込み、街に活気を集めている、北海道帯広市の「電信通り商店街」。その一つ「惣菜ごはん屋でんしん」には、地域の人たちや、商店街でははたらく障害者が毎晩のように集まっている。

松山千春のコンサート、寒かったよねえ?

帯広ケア・センターが経営する居酒屋「惣菜ごはん屋でんしん」の店内で仲良く飲んでいるのは、片平修さんと山本篤司さん。もう30年来の付き合いだという。片平さんは多機能型福祉サービス事業所「帯広ケア・センター」で、地域で暮らす障害者を支援し、山本さんは、同じ電信通り商店街にある、NPO法人十勝障害者サポートネットが運営するアンテナショップ「べんぞう商店」の店員として働き、電信通り商店街で運営しているアパートに一人暮らしをしている。お互い、仕事終わりに「惣菜ごはん屋でんしん」に立ち寄ることが多いそうで、別に約束しなくても、ここで会うことはしょっちゅう。一緒に飲みながら野球観戦することが日課になっている。

「この人はねえ、昔から『社長になりたい』ってずっと言ってたんだよ、ねえ?」と片平さんは山本さんの若い頃の口癖を披露してくれた。「まだ今でも、社長になりたいとか言ってるの?」、「いやあ、そうでもないです」。なぜ社長になりたいんですか?と聞いても「いや~」と照れるばかりの山本さん、代わりに片平さんが「この人はねえ、仕切りたいんだよ。おせっかい、よく言えば人の役に立ちたいの」。

聞いているうちに、どんどん昔の思い出話が出てくる。「3年前、音更(帯広の近くの町)でやった、松山千春のコンサート、寒かったよねえ?」、「はい、はい。確か8月で。でも最後はみんな震えてました。でも最後に花火があがって」、「そうだそうだ、キレイだったね」。

取材したのは3月。北国はまだまだ冬だったが、2人の会話で、気持ちがほっこり温かくなった。

※「電信通り商店街」の記事は、2017年5月発売の『コトノネ』22号に掲載されています。

写真:山本尚明