コトノネだらだら座談会 のぞき見版【4月20日 齋藤正さん】

座談会の様子

4月のだらだら座談会のぞき見版をお届けします。今回は、目黒区社会福祉事業団の齋藤正さんがお話してくれました。テーマは「フクノネ」。「福祉の根っこ」ということで、「コトノネ」にひっかけてくれました。齋藤さんが福祉に興味を持ったのは学生時代。「社会とか生活に関係することに興味がなかった。でもそんなときにベルリンの壁崩壊のことを聞いて。社会のしくみって変わるんだなって思ったんです」。その後、「特殊法人雇用促進事業団」で、企業の人材育成や社会保障に関わる仕事に就きました。そこで目の当たりにしたのは、無年金障害者や、生活保護を受ける障害者のこと。当時、障害者福祉の研究をしようしていましたが、ある言葉がきっかけで「現場で福祉のことを学びたい」と事業所ではたらく道を選んだそうです。

齋藤さんにはピアニストを目指していた友人がいましたが、高校生のときに聴覚を失う病気にかかり、その道を断念。彼女は、役所へ行ったり、本を読んだりしていました。けれど「自分が障害者だと知らされただけ。福祉はわたしを救ってはくれなかった」と。その言葉を聞いた齋藤さんは、「福祉のしくみのなかで救われない人もいると気づかされた」と言います。では、「福祉」ってなんだろうと考えました。中国の漢の時代の書物『易林』に見つけたのは、「一人ひとりが自分の人生を悠然と暮らしていくさま」というもの。福祉がこんなに広い意味を持っていたことに気づく一方で、実際は福祉に限定的なイメージが付いている。いまの福祉の教科書には「自立支援と共生社会」が両輪で書かれているのに、なぜか自立支援ばかりが強調されていて、なかなか共生社会には辿りつかない。そんな疑問を持っていたそうです。

そこで、齋藤さんが大切にしているのは、職員だけでなんとかしたり、福祉に興味がある人だけが関わるのではなくて「福祉事業所にどれだけの人が関わったか」、「福祉事業所の商品がどれだけの人に渡ったのか」ということです。それを具体的にしたのが、「大橋えのき園」で立ち上げた新ブランド「enone」。そこで、ワークショップのファシリテーター、デザイナーに関わってもらいながら、職員たちといっしょに利用者のためにどうしていきたいのか、言葉を出し合っていきました。そうしてできあがったロゴマークやイメージソングは、施設でつくった商品のパッケージになったり、歌手のライブで披露してもらったりと、福祉の専門家ではない人たちにも届けられるようになりました。

「ぼくは昔、福祉ってかっこわるいイメージを持っていて」と齋藤さん。だからこそ、福祉事業所でつくる商品をより多くの人に手に取ってもらうには、かっこいい、かわいい、おいしいことが大事になる。障害者が身近にいないと、福祉は自分に関係ないと思われがち。でも、そもそも福祉は生活のすべてに溶けこんでいる。だからこそ、いろんな分野とコラボしても違和感がないし、自然に福祉の理念とか大事にしているものを現場から発信できるんじゃないか。そんな想いで「下目黒福祉工房」では、新しいプロジェクトに取り組んでいるそうです。

目黒区社会福祉事業団の事業所「かみよん工房」さんのパンの写真

この日の軽食には、目黒区社会福祉事業団の事業所「かみよん工房」さんのパンをご用意。とてもおいしくいただきました。ごちそうさまでした!