ハーブ×福祉で、地域を盛り上げる!―いま注目の「農福連携」って何? (前編)

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「農福連携」というコトバを、ご存じだろうか?
最近注目されつつあるこのコトバ、文字通り「『農=農業』と、『福=福祉』をいっしょにやっていこう!」という意味。
農業の担い手不足が叫ばれる一方、障害者の仕事は、まだまだ限られているのが実情。この2つを掛け合わせて、担い手不足に悩む農家にも、仕事の幅が限られている障害者にも、両者にとっていい関係をつくっていこうという取り組みだ。

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ハーブに触れて、みんな元気になってもらいたい

金沢市内から車で30分ほど、河北潟干拓地にあるハーブ農園ペザンは、昨年4月から「農福連携」の取り組みをはじめた。ぺザンは、全国でも珍しいハーブ栽培に特化した農園で、50種類ほどのハーブを農薬や化学肥料を使わずに栽培している。そのままのハーブももちろん購入できるほか、お茶や入浴剤、石鹸などさまざまなオリジナル商品も販売。ハーブをつかったクラフト体験や石窯ピザ焼き体験もできる。
遠く白山・立山連峰も見える、広々とした景色の農園は、金沢市内とはまた違う石川県の魅力を体験できる、知る人ぞ知る観光スポットだ。

オーナの俵朝子さんは、もともと福祉と関わりはなかったが、「園芸療法」に興味を持ったことから、関心を持つようになった。園芸療法とは、植物の栽培を通して、心や体のリハビリをすること。「ハーブは育てやすいし、嗅覚を刺激してくれる。花とはまた違った威力や薬効があるんです」。さらに、「見てよし・香ってよし・味わってよし・触れてよし」と、さまざまな活用の仕方ができるのが、ハーブの魅力だ。
勉強を重ね、福祉系専門学校で園芸療法を教える講師もしていた俵さん。「介護現場で足湯にラベンダーを入れたり、精神科病院でにおい袋をつくったりもしました」。

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写真左がオーナーの俵朝子さん

障害者といっしょに、ハーブ文化を発信していきたい

そんな俵さんが、本格的な農福連携に乗り出したのは、金沢市内で障害者の就労支援事業所を運営する株式会社クリエイターズの藤島健一さんと出会ったことから。藤島さんは作業療法士。精神科病院で精神障害のある人たちと関わる中で「植物を育てるのは、何よりのリハビリになると感じていました」。働く場として、農業をはじめたいとずっと思っていた。2人の出会いから、話はとんとんと進み、就労継続支援B型事業所(※注)「リハスファーム」を立ち上げ。昨年4月から、障害者10名もいっしょにハーブ園で、働くようになった。

もともとぺザンは俵さんが50歳を過ぎて、1人ではじめた農園。そろそろ後継者について考えていたところでもあった。働く人の数が一気に増えたことで、栽培も加工も、いままでとは比べ物にならないほどの人手が確保できる。俵さんは思い切って栽培面積を増やし、事業として拡大していくことに決めた。「これからどんな風になるのか、すごく楽しみです」と俵さん。ぺザンの新たな挑戦は、はじまったばかりだ。

※11月17日発売『コトノネ』20号で、「ハーブ農園ぺザン」と「株式会社クリエイターズ」の取り組みをご紹介しています。

写真:岸本 剛

※注 就労継続新B型事業所
通常の事業所に雇用されることが困難な障害者に、就労の機会を提供するとともに生産活動その他の活動の機会の提供を通じて、その知識及び能力の向上のために必要な訓練を行う事業のこと。「B型」は雇用契約を結ばずに利用する事業所で、そのほかに雇用契約を結び利用する「A型」がある。