白神山地の恵みを生かした仕事づくり「ねっこビジネス」――全員参加の町づくり「藤里方式」って?(後編)

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全員参加の仕事づくり、地域づくりの取り組みである「藤里方式」。これからチャレンジしようとしている「ねっこビジネス」は、これまでじゃまもの扱いされてきたり、忘れられようとしていたものを「山からの恵み」と捉え直し活用していく試みだ。

じゃまもの扱いされてきた「葛」をビジネスに活用する

藤里町社会福祉協議会が2016年9月に改装オープンさせたのが「農村環境改善センター」だ。藤里町の中心から車で15分ほど、白神山地の入口にあった施設を改装し、「ねっこビジネス」をはじめるのだという。会長の菊地まゆみさんは「藤里では、葛の根、わらびの根など『ねっこ』がたくさんとれる。それを使った事業を展開できないか。葛の根を粉末にしたり、わらびを塩漬けにしたりといった加工、さらにわらびを惣菜にするなどの調理ができるように設備を整えました」。ここから「プラチナバンク」の仕事を生み出そうというのだ。「ここには温泉がありますから、入りに来た町内の人にも、ちょっとでも『ねっこビジネス』をお手伝いしてもらおう、と(笑)」。また、宿泊設備を整え、町外・県外から人を呼び込み、セミナーや合宿に使ってもらおうとも考えている。宿泊施設の管理運営でも仕事が生まれる。

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「ねっこビジネス」の大切なノウハウである、わらびの加工や調理については、高齢者の力を借りる。町では、昔からわらびを採集し、調理し、食べてきた歴史がある。最近こそ、スーパーなどで調理済みのものを買ってきて並べる家庭が増えたというが、それでもいまのおじいちゃんおばあちゃん世代は、山菜の扱い方や、美味しい調理法をよく知っている。一方の葛は、これまで「じゃまもの」扱いされ、刈り取られ、捨てられるだけの存在だったが、菊池さんはそこに目をつけた。その構想を聞きつけ、「お前は葛なんかみたことないだろう」と、葛を菊池さんのところに持ってきた住民もいるという。
「全員参加の町づくり」を本気で目指す藤里町。捨てられてきたものや置き去りにしてきた知恵を見直すことで、すべての世代がつながり、ともに仕事を生み出そうとしている。

※11月17日発売『コトノネ』20号の特集で、「藤里方式」をご紹介しています。

写真:岸本剛