【コトノネ編集長のおまけ日記】奄美の観光コンシェルジュ

test_01 

どうしようかな。歩くか、バスで行くか。ホテルを出て迷う。歩いても、目的地の奄美図書館まで20分ほど。たいしたことはない。バスにするならホテルに戻ってバス停を教えてもらおうか。さて、さて、とわたしはたいしたことでない、ことで悩む。考え込む。こんな自分が嫌だ。そんなことぐらい、どっちでもええやないか、すっと決めろよ、とイライラする。そこで、前に止まっていたタクシーに乗った。アホらしい。何のために、悩んでいたのや、我ながら呆れる。

タクシーの運転手さんに行き先を告げる。奄美の観光客では少ない方ですね、と返ってきた。奄美を訪ねる人は、概ね2つに分かれる。1つは、奄美ならではの観光を求めてくる。なんですか、それは、と聞くと、「クジラ見物とか、夜は黒ウサギです」との答え。運転手さんは、「観光コンシェルジュ」と名乗った。それからは、怒涛のようなガイド。「ハブと言っても、奄美の人でも一生見ない人も多い」「島尾敏雄のファンなら、鹿児島県立図書館は行きましたか」「それなら、島尾さんの住居は?前もって頼んでいたら、家のなかにも入れますよ」。奄美のことなら何でも知っている。奄美図書館の前の道をまっすぐ歩いて、突き当りの少し手前に、たい焼きとタコ焼きの店がある。結構うまい。「わたしの親戚ですが、ぜひ、どうぞ。ただ、開店は3時からですが」と、営業時間も知っている。ひょっとしたら、この方、4万人の人口の奄美中の人と縁続きかも、と思ってしまう。

あっという間に、目的地に着いた。実は、奄美文化センターでやっている「ふるさと、奄美に帰る展」が目的で奄美に来た。どうぞ、時間のある時にのぞいてください、とPRして車を降りると、その運転手さんは、しばらくしたら、本当に会場にやってきた。

蔵座江美さんがよろこんで案内に立った。田中一村の絵から回りだした。最初の人物画から、運転手さんの逆解説がはじまった。その絵は、佐藤満熊さんと言って、一村といっしょに大熊(だいくま)の久野紬工場で働いていていた方。佐藤さんの人となりの話になった。

レンタカーでスマートに回っていては、地元の人とお近づきになれない。いやぁ、タクシーには乗ってみるもんですね。