【コトノネ編集長のおまけ日記】 黒田辰秋と魯山人

コトノネ編集長のおまけ日記

「社長賞」の副賞アート旅行、今年は「奈良・京都のグルメツアー」。わたしには案内したい店があった。メンバーはわたしを入れて4人だが、そのうち2人が京都出身。その京都出身者が行ったことはないというから、なおさら、張り切った。先斗町のお蕎麦屋と和菓子屋だ。

お蕎麦屋は、「権兵衛」。汁を一滴も残さず飲み干したくなる。大好きなのは、てんぷらそばか、きつね。運がよければ、隣の席には舞妓さんが来るかも。そのあとは、そこから歩いて2分とかからない、和菓子屋「鍵善良房」。ここで昼食後のデザートとして、くず切り。黒蜜でいただく。なんという滑らかさ、スルリと舌をすべり、喉を落ちる。あとに黒蜜の香りが残る。触感の美味を堪能する。それだけではない。ここには、人間国宝の工芸家・黒田辰秋の手による家具が店内にある。それも、什器として使われている。落雁の菊寿糖を買うだけでお客様。大いばりで、愛で触れる。京都に来たとき、わたしの余裕のある昼の黄金コースだ。なんと、金額的にはつつましやかな黄金であることか。

しかし、今宵の夕食には、魯山人と尾形乾山の器が待っていた。うちのスタッフは、なんという店を予約していたのか。お任せコースに、酒もお任せで注文すると、お銚子は、魯山人、お猪口は乾山だった。そのあと、お皿も魯山人だった。ああ、雑誌や博物館以外で、お二方の作品とお会いできるとは。手に持ち唇で感触を味わえるとは。明治生まれの親が生きていれば、「盆と正月がいっぺんに来たような」「贅沢すぎて罰が当たる」「いや、冥途の土産ができた」と大騒ぎしたことだろう。

それにしても、このお店、いったいお代はいくら。支払いはスタッフがした。会社に戻っても、しばらく、金額は怖くて聞けなかった。