「ただのお客さん」を、「ファン」にする ―クラフト工房ラ・まの 後編

「ただのお客さん」を、「ファン」にする ―クラフト工房ラ・まの 前編

昨年(2016年)から、クラフト工房ラ・まのでは、新しいプロジェクトをはじめた。それが、「コットンプロジェクト」。

ラ・まのは、里山のような広い敷地の一画に畑があり、そこで染料になる植物などを育てている。
3、4年前から綿を育てているが、ここでとれる量だけでは、限られてしまう。
そこで、「いろんな方に種をお配りして、綿を育ててもらって、とれた綿花を工房に持って来てもらったら、工房で使える金券と交換させてもらい、その綿と工房の綿で商品をつくり買っていただくプロジェクトをはじめたんです」と施設長の高野賢二さん。

集まってきた綿花を紡ぎ、糸にして、織りの製品をつくる。綿を通して、人と人がつながっていく新しいモノづくりの試みだ。
昨年種を渡したのは、約200人。綿が実をつけ、それがはじけて白いふわふわの綿花になり、収穫時期を迎えるのは秋。今年、はじめて綿花が工房に帰ってくる予定だ。

あらゆる人を巻き込んでいく、モノづくり

綿花を収穫しても、すぐに製品はつくれない。糸にする前に、種やゴミを取り除く作業に手間がかかるからだ。
「工房のスタッフやメンバーさんだけでやるのは難しいので、これもイベント的にみんなで出来たらいいなって。種をとったり、糸にするワークショップとして」(高野さん)。

自分が育てたり、関わった商品は、さらに愛着が湧くだろう。聞けば、ラ・まのには、畑仕事や製品の仕上げの作業に入ってくれるボランティアが、年間延べ300人もいるのだと言う。

「畑を自分たちでやっていたときもあったんですが、なかなか手がまわらなくって。畑をやれるところを探していらっしゃったボランティアさんがいて、いまはお願いしています。花壇をやってくださったり、草まで刈ってくれるんですよ」。
こんな風に、あらゆる人を上手に巻き込んでいくことも、ラ・まのファンづくりにつながっているのだろう。

「ただのお客さん」を、「ファン」にする ―クラフト工房ラ・まの 前編

「自分の仕事」だから、がんばりたくなる

「このコットンプロジェクトは、スタッフが自発的に考えたんです」と高野さんは、最後に付け加えた。スタッフ同士でアイディアや企画を出し合い、話し合って、新しいプロジェクトが生まれていくのだと言う。そういえば、こんなことも言っていた。「なるべくこちらからやって、というよりは、大変ですけど、そういう雰囲気に持っていくように工夫しています」。
ボランティアであろうが、スタッフであろうが、メンバーであろうが、誰でも「自分の仕事」だと思えば、がんばりたくなるもの。

ラ・まのは、誰でも参加できる染めや織りの教室も、不定期で開催している。楽しく工房に来たり、商品づくりに参加できる機会を数多く設けることで、お客さんの中には「ラ・まの一員」という意識を持っている人もいるのだろう。
わざわざ行きたくなる理由が、ちょっとわかった気がした。