【梶原真智 連載コラム ワンハンドキッチン】しょっぱいブドウ

onehandkitchen

梅雨らしい梅雨というニュースを聞きながら「らしい」って不思議な言葉だなあと思ってしまうこの頃です。ここ数年は「してました」な事後報告ニュースが多くなったように思いますが、やはり気になる季節の判断。だからといって何かが大きく変わるわけではないのですが、何事にも区切りってあったほうが一年のチャプター進んでいる感が持てるようです。ワンハンドキッチンとしての活動はご依頼いただく旅みたいなもので、その方その日その現場に応じてチャレンジの連続なのですが、毎年この時期は少し肌寒かったり、蒸し暑く感じたり、適切な表現の判断がつきにくかったりします。そんな時に限って「この時期に合うメニュー」というオーダーが入ってきたりもして。

「もう1年になりますねえ」。そう笑いかける、きっかけ作ってくださった方とごはんに行ってきました。コラムを届けるやりとりでお付き合いは少なくないはずなのにゆっくり話す機会はほとんどなくて、いい機会だなと思う反面厳しいご意見もあるかと少し緊張のお約束。とはいえ待ち合わせ場所に向かう足を重く感じるほど繊細でもない自分でもあって、実に和やかにお話楽しい時間でした。自由に気ままに綴る文章に毎回頭抱えているようにも思うのですが、さりげなくも的確な校閲に助けられながらなんとか1年。これでいいのかな?と思わない回はないのだけど「今月も読んだよ」「美味しそうな写真だった」「作り方おもしろいね」…、座談会仲間にかけられる声も励みになって続けてよかったのかもとポジティブに受け止められるようになりました。始めた外部発信は思いもよらなかったカタチになることもあって、今は活動の一部を語る動画や録音まで公開されています。(ご関心ある方はYouTubeで検索くださいませ)当然ながら様々なご批判やご意見、時には友人と名乗る人が現れたり悲しい攻撃を受けることもありますが、それでも育てられていることに感謝感じるこの1年。しみじみと振り返ることができるのは、ここしばらくで空気がしっとり落ち着いてきた(やっぱり梅雨?)からなのかもしれませんが。

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季節に合わせて作る料理はその時期の野菜をメインに使いますが、春と夏の間には果物を取り入れることが多くあります。爽やかな味わいはいつでもどの国でも好まれる。甘いばかりじゃなくて塩気も大事。どこにでもある食材でだれにでもできるレシピが一番。手順は本格的じゃなく気軽に楽しくつまめるものがいい。いつか皆さんとご一緒する場があったらどんなものを出そうかな。持ち帰ることができるびっくりおいしいものがいいかな。あ、これならできるかもなんて思ってもらえたら楽しいな。そんな中の一品を今回は紹介します。

しょっぱいブドウ。実はパーティー料理に忍ばせる定番のおつまみでもあります。初めてこれを作ったときは本当に出来心でした。生ハムでメロンや無花果を包むスタイルのおつまみが定番となって久しいですが、こうしたものがふるまわれる空間には特別感があってキラキラとしたおしゃれな人たちがとてもよく似合う。当時、いわゆる「いい感じの雰囲気」に合わせた演出、としてオーダーを多くいただいていました。仕事は楽しかったし様々な工夫をこらすのも面白かった。でもその一方でちゃんと食べてもらえないこともあって、モヤモヤとしたものを感じていたのも若干後押ししたようにも思います。ちょうど「食感を追究するグミ」が流行りはじめた時期でもありました。このおかしを口にしたとき、もしかしたらこれわからないんじゃないかな?と試しにこのメニューを出してみた100名規模の3時間、だれも本物のブドウではないと誰も気がつかなかった。それはそれで衝撃ではあったのだけど、意外と人の味覚って曖昧なんだ、もっと食を楽しんでいいんだと肩の力が抜けたことも今ではいい思い出です。

材料少なく驚きは大きく。おいしいも楽しいも片手で十分作れます。喉にしゅわっとする飲み物が合うように思います。

【材料】
おかしのブドウ型のグミ、生ハム、胡椒、オリーブオイル
 ※コンビニ食材でつくれる“おいしいイタズラおつまみ”です

【使うもの】
トング、ピック

【作り方】
①生ハムをほぐす
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②おかしのブドウ型のグミを巻く
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③ピックで刺す
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④オリーブオイルをかけて、胡椒をかける
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おいしい幸せもたのしい喜びも実はきれいとおんなじで
自分のチカラでつくることができる。
たいせつにしたいのは一緒の時間と笑える発見のはずだから
ささやかな挑戦がつくるのは未来。
コンビニ棚からやってきたしょっぱいブドウ、出来ました。

これまでのお話は、コチラ