【梶原真智 連載コラム ワンハンドキッチン】ひきだす人参サラダ

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春の訪れを感じるのは、朝が早くなったことだったり道端に咲く花だったり背筋を伸ばして歩いていることに気がついたりと何気なく入ってくる様々な刺激の柔らかさを受け取るときでしょうか。自分の場合はそのとき口にする野菜の甘み。寒さに耐えつつ生きるために糖度が高くなる冬野菜と違って、コクの強くない水気あるやさしい甘さが春、に思います。これは四季あるからの素晴らしさ。日本に戻ってきてから改めて感動覚える嬉しい味わいです。

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当時、暮らしていた国の食料には戸惑いを感じていました。売り方は山積み。色鮮やかで匂いも強め。価格は高いとは思わなかったけれど、味の違いには驚いていました。そしてその固さにも。これまで見てきた、知っていたはずの野菜や果物と同じ見た目のようで同じではない。買う前に味見をさせてもらうのだけど一口でその違和感に「うっ」と息をのむこともあったりして。次第に生で食べることよりも火を通したイメージを持ちながら選ぶようになりました。食を通じて違いを知り、当たり前が当たり前ではないということを理解していたように思います。

元々食べ物の好き嫌いはなかったのですが、日本では「じゃがいも」「葱」「人参」は常備野菜としてキッチンにあったものでした。煮ても焼いてもとてもおいしい。どこにいってもベースとなるのはこの3種類。一先ずこれらがあればなんとかなる、と思っていたのですが思いがけず人参では苦労しました。牛蒡のように細いもの、黒いもの、黄色いもの、独特の苦みがあるもの。ぶつ切りやジュースでよく見かけはしましたが、欲しいのはコレジャナイ感がどうしてもあった。もちろんそれはそれでおいしくはするのだけど、甘みのある生食もできるオレンジ色のものにはほとんど巡り合えませんでした。そのためか人参にはひと際思い入れがあって、いまでもおいしく食べたいと思ってします。今回はそんな人参の話。

野菜の苦手はやっぱり丸いところ。すぐに手には入るのに食べるまでの過程には悩みました。根菜類は比較的長くて円錐形をしています。これらを扱いやすくするためのポイントはサイズ感。目安になるのは自分の手の大きさです。個々人で違う身体だからこそ、自身の手の大きさを知っておくことが調理を行う上で大きな意味を持ちます。道具の力も借りながら、いかにして野菜を制していくか。食べやすい大きさにさえなれば料理のレパートリーはどんどん増えていきます。
できたら一度は片方の手でお試しいただけたら。

【材料】
人参 大なら1本(小なら2-3本)、ごま油・ごま・塩昆布 各適量
※縁のあるまな板と手のひらサイズのピーラーを使っています

【手順】
①人参の皮をむく
※人参全体の大きさをみて扱いやすいサイズにする
※縁に人参を親指で押し付けながら固定し、皮部分にピーラーをあてる
※手前に手繰り寄せるように皮をむく

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②人参を切る
※縁に押し付けながら、ナイフを手前に引いて切る
※半分まで切ると人参の位置を入れ替え、切った側を縁にあてると安定し切りやすくなる
※細切りをするときもズレがおきないように縁を活用し、安定させながら切る

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③切った人参を耐熱容器に入れ電子レンジにかける
※500wで2分程度、上下を返し熱が通っていないようであれば30秒追加していく

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④材料全てをボールにいれて和える

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⑤盛り付ける
※昆布のうまみと人参の甘み互いが引き出す旨味が魅力です。豆腐やご飯にかけたり、かるくバターを塗ったサンドイッチの具にもおすすめです。

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細く長く太く短くさまざまにあるカタチが同じ名前だったり。
丸く角張り転がるさまざまにあるカタチが同じ名前だったり。
キッチン越しの光景はもしかすると
生活の哲学なのかもしれないなんて
おしたりひいたりできていく人参サラダ、出来ました。

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