【梶原真智 連載コラム ワンハンドキッチン】くす玉仕様のポテトサラダ

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くす玉仕様のポテトサラダ

人が集まりやすい季節になると思い出すのは、あたたかな光や賑やかな笑い声でしょうか。今でこそ心刺激するお呼びがかかれば、どこにでも出かけていく自分ですが、最初からそうだったわけではなく。12月は正直いって今でも苦手です。師走というだけあってなんとなく落ち着かない。世間が何となく浮足立つような、誰もが来る年に向けてわくわくそわそわしているような。急ぎ足で通り過ぎていく時間と人を眺めながら、ああ、あそこにはもう自分はいないんだなと感じていた頃を思い出す。

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怪我をする直前まで医療者として、働いていました。患者さんの為にという使命感をもっての勉強、研修会、研究、調査。時間がとても足りなくて昼休みだって食事時間だってもったいないくらい。次々と飛んでくる指示、処方箋。自分のことは後回し、とにかく毎日忙しい。だけど「自分は役に立っている」そんな思いがそこにはあって。確かに、その当時の医療に関する知識はあった。だけど、治療から先の景色は何も知らなかった。これから先の人生をどうしたらいいのか、情報を求めて尋ねても調べても欲しいものは当時、何もなかった。日々強まる疎外感、いたたまれない焦燥感に苦しさという言葉しか当てはまらない。何度も足を運んでいる病院ですら必ず言われる、『車いすの人』。名前じゃない、事象で呼ばれる状況に今を突きつけられて息詰まる。無意識の、ひと塊として扱われているあの感覚は今でもそう声掛けられる度に蘇ります。

2003年12月。人に会うのも話すのも嫌になっているというのに、我が家では年末に必ずホームパーティーが開かれる習慣があって。怪我をした年も、変わらずやるんだと意気込む父に複雑な思いを持ったことを思い出します。参加したくないけれど、もてなす側には逃げ場はない。運び込まれるツリーやリボン、プレゼント。準備が進む家の中で自分ができることなんてないと思っていても、手伝わないわけにはいかなかった。飾りつけする脚立の足を持ったり、ワインリストを確認したり。忙しくはしているけれど、これまでみたいな「役立つ自分」は戻らなくて。片手でできる前菜でも作れたらいいのに。
そんなある日、余興に使うくす玉を見てはっとしました。あ、もしかしたら、できるかも。

これから時期だけでなく使える方法です。日常に、一品持ち寄りのパーティーや自宅でのごちそうに、是非一度お試しを。

【材料】
じゃがいも、ブロッコリー(冷凍でも可)、ベーコンビッツ、フライドオニオン、マヨネーズ、練乳(砂糖と牛乳でも可)
黒コショウ、あればミニトマトまたは型抜き野菜(パプリカ、ニンジン等の明るい色のものがおすすめ)

【使う道具】
ラップ、みかん剥き器具(ペティナイフでも可)、ボール、電子レンジ

【手順】
①じゃがいも、ブロッコリーを水洗いする
※冷凍のブロッコリーを使う際は解凍し、水気をとっておきます

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②じゃがいもの周辺にぐるりと一周するように切れ目を入れる

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③切れ目をいれたじゃがいもをラップで包み、2分電子レンジにかけ上下を返してさらに2分かける
※竹串等で刺し「抵抗感なく通るまで」を目安にします(かけすぎると固くなるので注意が必要です)
※トマト以外の飾りつけ用に使う予定の野菜は30秒から1分を目安に電子レンジにかけ扱いやすくします
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④じゃがいもを手のひらで潰し、皮をとる
※押しつぶすと切れ目に沿ってくす玉にように割れてきます
※皮が剥きやすくなります
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⑤他の材料を加え全体を混ぜる

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⑥全体を冷まし、盛り付ける
※華やかさを演出するために型抜き野菜を飾るのもおすすめです
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※ポテトサラダのみを小さく丸め、砕いたお菓子をまぶしつけると「揚げないコロッケ」にも

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同じものをみているようでも感じていることは違っていたり。
出来ないと思っていることもやりかたを知らないだけだったり。
あ、とおもうこと。
は、と気づくこと。
もしかしたらのきらめきが今ここを変えることがあるのかも。
これから割れるくす玉に一緒に飛び出す期待を込めて。
やってみたいに火をつけたポテトサラダ、出来ました。

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