【梶原真智 連載コラム ワンハンドキッチン】自分リズムのスコーン
自分リズムのスコーン
ないならつくるの精神はハンデが磨く。
今では片手でほとんどのこと、やっていますが両手を使っていたころにしてみると、時間も手間もやはり必要です。そして何より思い知るのはこれまで以上に体力気力が持たないこと。要領よくはなったけれど、細かい動きは全身運動にもなって思いのほか、疲れてしまう。ハンデを持つようになってからの、いわゆる「あたり前の生活」は、1.8倍位早くて、3.6倍位もどかしい感じです。上手く言えませんが、けして倍のマイナスじゃない。ほんの少しだけは自分努力を加味してもいいかな、とは思うのだけど。
車いすでしか移動できない身としてはタイヤの回転なしには進めません。タイヤは確かにゴミや砂を巻き上げてしまう。それは変えようのない真実です。食事や買い物や仕事や生活の中で、大多数の前に我慢するのはあなただけで十分でしょ?と突き付けられる度に、あの時のパンの香りが過ります。
お金があっても売ってもらえない。私はパンが食べたかった。買えないのであればどうするか。力の弱くなった片腕に抱えるには大きすぎる課題のように思いました。だけどそもそもパンって、どうやって出来ているのか。材料は。発酵は。こね方は。焼き台は。頭の中で作りだしたら、気がつきました。
あ、なんだ、できるかも。
たしかにこれは、パンではありません。一番近いのはスコーンだと思います。でも、材料3つで簡単に作れてしまう自分リズムで覚えてもらえたら。みんなに優しい、美味しい時間を是非。余裕ある日の朝ごはんにも。
【手順】
①材料をフォークで混ぜていく。ポイントはグラノーラ:ヨーグルト:ホットケーキミックス粉を1:2:3の割合にすること。混ぜやすくするために最後にグラノーラを入れること。
②クッキングペーパー(大)を鉄板に広げる。丸まる方向を下にすると広げやすい。
④クッキングペーパー(小)越しに手の形を利用して塊を丸くつぶし成型する。
辛そうな香りにドキドキするのはきっと強烈な口元の熱さが。
苦そうな香りに逃げ出したくなるのはきっと我慢の咳込む息が。
美味しい香りに微笑むのはきっと楽しい思い出が。
時間や手間が愛じゃない。
一緒に食べるは、奇跡の連続。
いただきます、ごちそうさま。
伝えているのはきっと毎日の当たり前への小さな願い。
今日も誰かの笑顔のために自分リズムのスコーン、出来ました。
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