【真備町のいま 岡山マインド「こころ」より 多田伸志】49日ぶりに、集まった

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真備町で、「地ビールと音楽の夕べ」

香川県高松の沖、瀬戸内海に浮かぶ小さな島、島全部がハンセン療養所、大島青松園があります。ここで18年間、毎年コンサートが開かれてきました。島に人が集う日、うたい続けたのはシンガーソングライターの沢知恵さんです。8月25日(土)、18回目の大島青松園コンサートの日。この日、海を隔てた倉敷市真備町で私たちは「地ビールと音楽の夕べ」を持ちました。
7月7日(土)、あれから49日。避難所やみなし仮設に出られた人たち、被災は何とか免れた高台の人たち、そして真備町を支援してくださった人たち…、真備町箭田に暮らすみなさんを真ん中に「集まりませんか?」と呼びかけました。夕刻5時から8時まで、真備公民館の駐車場は300名を超える命が寄り合いました。
マインドのみんなで会場づくりをしました。長机を並べ、パイプ椅子を並べ、簡易テントを張り…ビールサーバーを並べ、子どもたちのために「ヨーヨー釣り」を膨らまし…、そして。

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こんなに人がいる、みんな笑ってる、泣いてる、地ビールはあっという間に100リットルがなくなりました。「被災してもU字溝がある」って、焼き鳥を焼く人たち、「枝豆なら出せる」って、子どものためにかき氷出すって、焼きそば屋を出すって、竹で灯篭をつくったから並べてって…。みんな少しずつ持ちよって、企画書も配置図も何もない、すてきな時間がはじまりました。

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被災した小規模多機能事業所のお年寄りとスタッフのみなさん、みんなで小学校に避難して、それからずっと、福祉避難所として泊まりがけでハンディーのある人たちを支え続けた人たち。利用者もスタッフもみんなでぶっつけ本番、生ギターの伴奏で4曲うたわれる…最後は「故郷」。箭田の爺さんが語る、「こんなことになったけど、避難所に行って、わしらだけじゃない、我慢せにゃーと思った…」、そして爺さんが吹くハーモニカとみんなが唱和する「故郷」、涙が止まらない。

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こどもたちがうたう。被災する前、箭田小学校でみんなでうたの練習をしていた「やさしさにつつまれたなら」。被災後はじめてみんなが集まった、そしてうたう、大きな声で。ギター伴奏しながらまた壊れる。暗闇にろうそくと、一個の工事用サーチライトが影を映し出す。みんな帰らない。終わった後も帰らない。片付けをする人たちと、ずっと話をし続ける人…花火をする子どもたちのBGMは沢知恵さんの「人生の贈り物」。
ひとがいる、こんなに熱がある、まちが「一緒にやろう!」と産声を上げたような気がしました。みんな集まりたい、話したい、吐き出したいんです。来月もやろうと決めました。

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まちの人の熱、若者たちの力

翌日、26日(日)は岡山市で若者たちが企画してくださった「チャリTプロジェクトフェスティバル」にトーク参加。ちょっとしたアイデアや自転車(チャリ)をデザインしたTシャツを売る、ミュージシャンがライブを続ける…食や雑貨を売る店…真備に寄り添おう、若者が差し出してくれた手…。真備のはなしを、そしてこれからのはなしを、若者たちに伝えたくて行ってきました。真備の夕焼けを語りうたう若者たち…また壊れる。
こんな二日間、私は人の熱を、まちの人、そして若者たちの力を久しぶりに感じさせていただきました。8月1日、マインドのみんなが避難先の精神科病院からグループホームに帰ってきた日…、玄関先に靴やつっかけが並んだ日…れしかった。そしてまた、この二日間、大勢の人からいただいたものをまちにお返ししたいと思います。

岡山マインドは、被災された人たちが最後の一人になるまで見届ける組織を真備町の中でつくろうと提案いたします。私たちは「真備地区関係機関・事業所等連絡会(通称:真備連絡会)を三年前からやっています。町内の高齢福祉事業所と、障害福祉事業所、病院、行政、社協、ボランティア、そして当事者が参加する勝手連です。でも倉敷地域自立支援協議会の小地域部会でもあります。この中に真備町の人の復興を担う「お互いさまセンター(仮称)」をつくろうと提案いたします。自分たちのまちです、自分たちで「役割」をつくり出し、自治したいと思います。
この半年間、その基盤づくりに走ります。倉敷市社会福祉協議会さんが委託する「支え合いセンター」とキチンと協働できる地元の民間の組織づくり。拠点は全壊したマインド作業所、ここを建て直し、その中につくろうと思います。「みんつく(みんなでつくる財団)」さんがこの半年間の資金の支援をしてくださる可能性があります。この先も、自分たちで持続できる仕組みを立ち上げようと思います。

「一緒にやろう!」プロジェクト

ご報告です。真備町復興プロジェクト「一緒にやろう!」の口座には、現在270万円ほどの「志」金をお寄せいただいております。心から感謝いたします。(コトノネ編集部追記 原稿執筆時からさらに増え、9/3時点では320万円を超える「志」金が集まっているそうです!)今日も「妻と子どもは妻の実家に預けて、私は家の中にテントを張って暮らしながら片付けをしています」。飲食の自営業の再建と自宅の改修に向けて立つ。人がいなくなる、でもやり続けたい、こんな話をお聞きしました。こんな人たちがまちを出ていかなくて済むように、みなさまのご支援、よろしくお願いいたします。
真備の夕焼けは本当にきれいです。「ならんですわって沈む夕日を一緒にながめてくれる、友がいればほかに望むものはない それが人生の秘密、それが 人生の贈り物」。

多田伸志

真備町復興プロジェクト「一緒にやろう!」趣意書

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