【コトノネ編集長のおまけ日記】親が不公平せんと、どうすんねん

コトノネ編集長のおまけ日記

きのうの電車で、気づかないうちに父との思い出を振りかえっていました。
 
わたしが高校生のころのこと。父と2人だけ家に残され、昼食をとっていました。そのとき、姉の話題になりました。わたしには、3人の姉がいます。わたしは、4人姉弟の末っ子の長男です。
3人の姉のなかの1人の姉、その暮らしぶりについての話題です。オヤジが言うには、その姉の夫の給料が遅配になったらしい。大丈夫かな、と家計を心配しています。義兄は真面目に働くタイプです。額に汗することをいといません。でも、なぜか、勤めた会社が倒産したり、仕事でつまずく。「能力も性格も悪くないのに、運がないね」と父の心配は続きます。「技術を身につけといた方がええな。運転免許でもあれば、いざというとき役に立つのに」と父。「そんなん言うて、お金出したんのん」とわたし。父は余計なこと言うなと怒るかと思ったけれど、「そやな、彼にその気があれば出したらんとな。いっぺん機会があったら言うてやろかな」と答えた。
3人の姉のなかで1人の姉だけ特別扱いしている。泣きついてくる姉ではないが、何くれとなく助けている様子だ。2人の姉の旦那は、安定した企業に勤めていたり、自分で商売を何とかやっている。経済面で親が気にかけることはない。それでも、2人の姉はひがむのではないか。
わたしは、ふだんから思っていたことを口に出してみた。「そんなことしたら、3人の姉ちゃんのなかで、不公平なんちゃうか」。オヤジは笑顔のままで、「そやな、不公平やな」と素直に認めました。「けどな、世の中が不公平やろ。しやのに、親が公平にしたら、どうすんねん。救われへんで」とオヤジは笑いました。なるほど。わたしは、ホンマに子どもやなあ、と胸を突かれました。

そんな昔々の出来事を思いだして帰ってきたら、玄関で、きょうはお盆や、と思い出しました。朝出かけるときには、オヤジの好きなたばこを買って帰るつもりだったのに、すっかり忘れていた。嫁はんに話すと、「そりゃ、きっと、コンビニによって買ってくれるように、お父さん、駅まで迎えに行きはってんで」と言われました。
オヤジのことを思い出してなつかしい気分になっていたのに、死んでも親不孝してしもた。