コトノネだらだら座談会 のぞき見版【7月20日 加藤未礼さん】

座談会加藤さん1

8月のだらだら座談会は、コミュニケーションデザイナーの加藤未礼さんがお話してくれました。コミュニケーションデザイナーとは「人」「モノ」「コト」をつなげて、循環をつくる人のこと。加藤さんはコンサルタントとして、さまざまな福祉施設に関わっています。2008年に立ち上げた事業「おおきな木」のホームページには「『福祉』が社会の真ん中で人を幸せにしていくことを目指して」という言葉がありました。「『福祉』って本当は広い意味なのに、『障害者福祉』に狭まってしまっている気がするんです」と加藤さん。
そのように思ったきっかけは、なんだったのでしょう。

加藤さんは、板橋区にある小学校の特別支援学級で、教員の補助として働いていました。そのなかで感じたのは、裏表なく、自分を受け入れてくれることへの居心地の良さ。障害を持つ子どもたちと過ごしたその時間が、いまの加藤さんの原体験だったと言います。
その後、百貨店で販売の仕事に就き、子どもが生まれたことをきっかけに現場を離れます。その間にも、障害を持つ子どもたちといっしょに、地域と関わりながらできる仕事について考えていたそうです。そして個人事業「おおきな木」を設立しました。
施設が向かっていく方向性を話し合うときに、加藤さんは組織を一本の木に見立てたワークショップを開催しています。「これは、自分だけで循環するんじゃなくて、施設の外の人たちにも循環していく図なんです。太陽が施設が考える理想の社会で、そこに向かって伸びていく。根っこが想い。幹が手段。実が目標。例えば、福祉職員なのに、なんでパンをつくってるのかって悶々としてる職員もいる。でも、目的は支援で、パンは手段。鳥はお客さん。根っこは利用者のためなんだけど、でも、実が鳥に届いて、地面に落ちてはじめて、木の栄養になるんです」と加藤さん。

座談会加藤さん2

まず、加藤さんがはじめて関わったのは「小茂根福祉園」。シルクスクリーンの商品、刺繍のポーチ、自家焙煎のコーヒーをつくっています。生活介護と就労移行支援B型の複合施設で、お互いに支援する人や、優先するべきものが違ったりして、摩擦があったのだそうです。でも、「KOMONEST」というブランドを立ち上げて、自分たちの向き合っていくなかで、お互いに目をかけあうような空気ができてきたのだと言います。
また、イベントの企画も加藤さんの仕事です。小茂根福祉園でつくっている干支の小物を前に職員が一言。「神社で売れないかな」。さっそく、その話を神社へ持ちかけると、神社の敷地で販売イベントを開催することになりました。地域の販売イベントに福祉施設もいっしょに出店することが実現しました。「いろんな人たちが自然と混ざって、みんなが等しくいられる場になっているのを見て、報われた感じがしました」と加藤さん。5年間たったいまでは、約5000人が来場するイベントになっています。

最後に、「福祉を中心とした地域の循環ができました」と加藤さん。昨年8月、板橋区にできた地域電力「めぐるでんき」の話をしてくれました。電気を地産地消して、利益の一部を地域に還元していく地域電力のなかでも、めぐるでんきは地域の福祉や地域の課題解決に投資していくとコミットしていることが特徴です。まずその1つとして区内をはじめとする福祉施設にギャラリーを無料で貸し出しています。「めぐるでんきのコンセプトは、電気を手段にして町をつなげていくことなんです。生みだしたお金を福祉に回して、社会に循環させていくと、福祉が中心の社会ができあがっていくんじゃないかな」と加藤さんは言います。
めぐるでんきの活動は、板橋区スマートシティ推進プロジェクトに認定されています。

「福祉を変えたい」と加藤さんは言います。「神社のイベントのときに、車イスの方がバランスを崩した。そのときいちばんはじめに手を差しだしたのが福祉職員。災害とか何か起きたときに、福祉職員がいちばんかっこいい人になれるって確信しました。でも、自分にそういう価値があると思えていない人が多いんだと思います。もっと福祉に携わる方や障害を持つ方が誇りを持てると、福祉自体が変わるんじゃないかって思っています」。

次回の座談会でお話してくれるのは、東急百貨店で「チームえんちか」をまとめる松田成広さん。以前にもお話いただいていますが、もう一度話を聞きたいというリクエストがありました!前回とは違うお話の内容になる予定です。
座談会についてのお問い合わせは、コトノネ編集部(03-5794-0505)までお寄せください。