コトノネだらだら座談会 のぞき見版【2月23日 岸本剛さん】

2月のだらだら座談会では、季刊『コトノネ』を創刊時から支えてくれているフリーランス・カメラマン岸本剛さんがお話をしてくれました。

岸本さんは、高校卒業後に海外へ渡り、スポーツ写真を中心に活動を続けてきました。コトノネの写真を撮りはじめたきっかけは、3.11。震災の写真を撮っていたときに、「少しでも人の役に立てたら」という想いがあったと言います。

 

zadankai_0005

これまでコトノネの取材で撮影してきたものから写真を選んで、エピソードを話してくれました。

宮城県石巻市、被災地で見つけた花。なんでもない景色に、自然とレンズを向けていたそうです。

zadankai_0010

これは、福島県南相馬市の「えんどう豆」(『コトノネ』vol.1掲載)で撮った写真。「ちゃんと撮ってるか?」とばかりに、得意げにカンバッジをつくる安達香樹さんがいました。岸本さんが構えるカメラを気にして、レンズを見つめてはポーズを取っていました。その後に、彼は亡くなります。10号のグラビア「岸本剛自選フォト5」にも登場した安達さん。写真展で使用されたパネルは親御さんの元へ届けられたそうです。

zadankai_0015

「南相馬ファクトリー」の自閉症の男性。職員さんから「他人に近づかれるのが好きじゃないみたいで。あまり寄らないでくださいね」と言われたけれど寄ってみたのだそうです。「正面から撮ると、ソワソワしはじめた。心の中で彼と会話をすれば、ぼくの気持ちを分かってくれるんじゃないかと思ったんですよね」と岸本さん。

 

コトノネの写真を撮りはじめた頃、まだ障害者と接することに慣れていなかったこともあって「どんな動きや表情をするんだろう」と観察していたそう。しかし、今はどのように向き合っているかという質問に対して、「接し方はスポーツ選手も、障害者も変わりませんね。多くの健常者は、内面を隠します。でも障害者はとてもストレート。真っ直ぐ付き合える。その人の個性を読み取り、表現してあげたいなって思うんです」と答えます。

 

また、参加者から「どうして、こんな写真を撮れるんですか?」と質問がありました。

「最初はカメラを持たないで、いっしょに遊ぶ。ぼくのことを知ってもらう。仲間に入れてもらう。それがあってはじめて、写真を撮るっていうのがぼくのスタイルなんです。いきなりカメラ向けられたら、誰でもかまえるでしょ?」と岸本さん。スポーツ選手でも、障害者でも、それぞれが1人の被写体であることには変わりない、そんな姿勢が岸本さんの言葉から伝わってきます。

 

さらに「今までの『コトノネ』を読み直したくなりました」という声も。『コトノネ』の創刊号からこれまでを岸本さんの写真といっしょに追体験する回となりました。岸本さん、ありがとうございました。

写真:岸本剛